元気ですか〜?!
どうも、ろけねおです。
髙田延彦さんがYou Tubeを始められたそうです。これは一度は観ておかねばなりません。しかも、最初のお題は1997年10月11日のヒクソン・グレイシー vs 髙田延彦を振り返るというのです。
これまで紙媒体では語られことがありますし、You Tubeのなかで髙田さん本人もヒクソン戦に関しては語り尽くした感覚があって、今また振り返るのはあんまり気分のいいものではないような感じです。
でも、文章を読むよりも本人の口から出た言葉を聞くほうが遥かにリアリティがあるし迫力があるのは当たり前ですから、さっそく観ました。
ちなみにボクが気がついた時にはこのヒクソン戦の話は前編・中編・後編と全て公開されている状態でしたので、一気に全部観ました。
一人ひとりに手を握って感謝を言いたい
まずは前編です。
実はこれを観る前に、久しぶりにヒクソン vs 髙田を観ました。1回目も2回目も観ました。
もしもこの試合を観たことがない方は、試合を観てからYouTubeを観るとより楽しめると思います。
前編では会場入りから試合前の会見の様子までが流れます。ボクは見ててそんな悪いようには思わなかったんですが、髙田さんは若い頃のご自分の会見での態度が悪いとおっしゃってました。
中編で試合直前の気持ちを語っておられますけども、それを聞くとこんな感じの対応になっても仕方がないかな〜とは思いました。
マウスピースの選択にナーバスになっている場面が出てきます。
普段使っているものをそのまま使えば良いんじゃないかと思うのですが、結果いつもと同じものを使うにしても、選択肢を用意してもらって、他のと比べていつもやつにならないと、落ち着かないそうです。
ヒクソン戦がそうだったのか、他の試合もそうだったのかわかりませんが、普通の状態ではないことがよくわかるシーンでした。
この控室で様子を収めてビデオテープは髙田さんご自身で保管しておられたそうですが、これまで一度も観たことがなかったそうです。
今までこの試合に関して触れるときは自分の記憶をたどってお話になっていたようですが、客観的に自分を見て、これまでと違った考えが浮かんだり、記憶が抜けているところが蘇ったり、記憶違いがあったのかも知れません。
当時のご自分の様子を見て「一人ひとり、手を握ってあの時はありがとうと言いたい」とおっしゃいました。あのときの自分は感謝が足りないというようなこともおっしゃいます。
会見の態度もそうですが、やっぱりこんな試合の前に自分のこと以外に気を使うことなんて出来ませんよ。
やっと客観的にこれを観られるようになって素直にこの試合に関係したすべての人に感謝したいとおっしゃったのが嬉しかったです。
ヒクソン戦のあった10月11日になると、毎年まるで命日のようにヒクソン戦のことを思い出すとおっしゃってますが、来年からはもう思い出さないかも知れないなぁと思えて嬉しかったのです。
周りからその日になればヒクソン戦のことを言われるから、思い出さないわけにも行かないでしょうが、命日的な捉え方ではなくなるような気がしました。
ボクは当然ここまでの極限状態に追い込まれたことはないのですが、自分を客観視するのは必要なのことだなと感じました。なかなかが出来ませんが・・・。
処刑台へ向かう気分
さて、中編です。
リングに向かう途中、とってもネガティブな気持ちでおられたようで「暗闇の中を歩いている」とか「孤独」とかそういう言葉が出てきます。
その中で一番印象的だったのは「処刑台へ向かう気分だ」的なことをおっしゃられたことです。
この言葉は、これまで髙田さんがヒクソン戦について語られたときに、よく出てきたフレーズですから新鮮味はないわけですが、改めてご本人の口から、この言葉が出てくるとなかなかのインパクトです。
かつてアントニオ猪木さんが試合前に「万が一負けるようなことがあったらどうしますか?」と質問してきたアナウンサーに「出る前から負けることを考えるバカがいるかよ!」とビンタをかましたことのは有名ですが、このときの髙田さんは負けることを考えたバカだったみたいです。
もちろん、これからプロレスをする人と400戦無敗を誇る男とのガチンコを一緒にしたらダメなんでしょうけど、この時自信を持ってリングに向かえなかったのが、敗戦の原因のひとつだったように思います。
凄く練習したとは思いますが、すればするほどにヒクソンさんの存在が大きくなっていて、結局試合当日まで倒すイメージが湧いてこなかったんでしょうね。
なんかそんなことを語っていたのを読んだ気もします。うろ覚えですみません。
戦犯的負け方
最後は後編です。
タイトルにも『A級戦犯』と出ていますが、当時のプロレスマスコミも確かこう報じていたと思います。
そして本人も戦犯的負け方だとおっしゃってます。
そんな報道された試合なので、試合後、リングを後にする髙田さんには罵声が浴びせられているのだろうと思っていたのですが、これで見る限りは違っていました。
感謝や挑戦に対する賞賛が多く聞こえました。
むしろ武藤敬司選手に負けた時のほうが罵声を浴びせられていたようにすら思いました。
敗戦後の控室は静まり、よく言う表現ですがまるでお通夜でした。それを見た髙田さんが自分のせいでこんな雰囲気になってしまった、もっとみんな喜ばせたかったというようなことをおっしゃって、切なくなりました。
そして、控室の髙田さんは平静を装っていましたが、一瞬、ほんの一瞬ですが表情が崩れました。
それはシャワー室から嗚咽が漏れていたという話もありますが、それは本当だったんだろうなと思わせて切、またしてもなくなりました。
しばらくして奥さんの向井亜紀さんが明るく控室に入ってきました。髙田さんの体の心配をなさってました。
格闘家の奥様として思い浮かぶのはあびる優さんですが、向井さんはあびるさんとは対照的で素晴らしい振る舞いでした。
多分、敗戦のことを慰めたり、悔しさで奥様が泣かれていたら、髙田さんももっとしんどかったんじゃないでしょうか。
ケガはしてない?くらいに留めたところにグッと来ました。
向井さんはかつてグラビをもやっておられまして、美人でボインで頭も良さそうな感じなので、髙田さんが大変羨ましかったし、そんな人を嫁にもらうんだからやっぱり髙田さんはスターだわと益々好きになったものでした。
ここでも髙田さんの嫁選びが間違ってなかったことがわかりました。
見終わって髙田さんは、こんなことになっちゃったヒクソン戦をやってよかったとおっしゃいました。
それがちょっとホッとしました。
当時のグレイシー柔術は最強を謳ってきた新日系のプロレスラーにとって最大の敵でした。それを倒さない限り先に進めないという空気感だったと思います。
でも、我らが新日本プロレスはほぼほぼ無視していた状態でした。
※記憶違いもあるかと思いますが、お許し下さい。
そんな中、仲間の安生洋二さんが直接ヒクソンさんにやられちゃったし、団体のキャッチフレーズが「最強」だったために無視するわけには行かず、髙田さんが出撃したという感じでした。
ただ、この時の髙田さんはボクが大好きだった頃の紫のタイツとレガースの髙田延彦とは別人でしたので、ヒクソンさんに勝てる気が全くしませんでした。
なぜならプロレス界を代表するには、ちょっと時期が遅過ぎると思っていたからです。
すでに武藤敬司選手には足四の字固めで敗れ、橋本真也さんには垂直落下式DDTで敗れていたんです。
あんなに猛威を奮った髙田さんのキックもサブミッションもとっくに色褪せていたんです。
新日のリングに上がった時点でも、体の張りもなくなってたし、武藤選手や橋本さんに比べると小さく見えてしまったのも峠を越した感がありました。
だから、いっそ練習中にケガでもして試合が延期にならんかなぁとか、仮に試合があったとしても、椅子でぶん殴ったりして反則負けにならんかなぁとか思ってました。
ボクはプロレスラーと関わったら酷い目にあうと、ヒクソンサイドに思わせたら、ひとまず溜飲は下がると思っていたので、反則でもなんでもボコボコにして欲しいと思ってました。
また、ヒクソンを倒すのは新日の選手であって欲しいという気持ちもありましたので、この試合はやって欲しくなかったです。
髙田さんとヒクソンさんがリングで対峙した時に、リングアナがコールした2人の体格ほど差を感じられませんでした。ヒクソンさんが大きく見えたのか、髙田さんが小さく見えたのか、その両方なのか。
この時点で嫌な予感しかしませんでした。
だから、本当に負けちゃった時、やっぱりなぁって感じであんまりショックを受けませんでした。
むしろ絶対にプロレスラーが勝たないと行けないのに、向こうの土俵に乗っかっちゃったのか、というところに腹立たしさを覚えました。
あの後、猪木さんが「よりよって一番弱い奴が出て行ってしまった」と言いました。
そうだ、プロレス界でいちばん強いのは現時点では髙田さんじゃない、一番弱いとは思わないけど、一番強いわけじゃない、と思わせようとしたのかな?
ボクはええ事言うなぁと思ったんですが、ここからプロレスラーがMMAで負けることが普通になっちゃいまして、プロレスはしばらく暗黒時代に入ります。
そのおかげで、プロレスをプロレスとして楽しめるようになりました。格闘技との境が曖昧だった頃に比べると、純粋に楽しめるようになった気がします。
ボクもヒクソン vs 髙田があって良かったと思えました。これがなきゃ、もしかしたら未だに格闘技との境が曖昧だったかも知れませんし、ボクは格闘技があんまり好きじゃないので、これで良かったんです。
このYouTubeは多少切なくなることもありましたが、髙田さんもやっとあのショックを乗り越えたように見えて良かったです。
それではまた。
ありがとう!